2022年10月に経団連が発表した調査によると、大企業の7割以上がすでに副業を容認、または容認予定であることが明らかになりました。
この大きな働き方の転換期において、会社員としての安定したお給料を確保しつつ、難関国家資格である「行政書士」や「社労士」を活かして週末に手堅く稼ぐ「士業副業」に大きな注目が集まっています。
この記事では、文系士業の代表格である行政書士と社労士に的を絞り、会社員がムリなく副業を始めるための具体的な戦略と、絶対に知っておくべき「固定費の壁」などのリアルな現実を、生活者目線でじっくり解説します。
【最新動向】大企業の7割が副業容認へ!なぜ今「士業副業」なのか?
大企業の約7割が副業を容認する時代になり、中でも専門知識を活かして価格競争に巻き込まれにくい「士業」の副業が、会社員にとって現実的な収入アップの手段として選ばれています。
経団連の調査が示す「副業解禁」の具体的な現在地
副業を取り巻く環境は、ここ数年で劇的に変化しました。
日本経済団体連合会(経団連)が2022年10月11日に発表した「副業・兼業の促進に関するアンケート調査結果」において、大きなパラダイムシフトが確認されました。
対象となった会員企業(主に大企業)のうち、回答を寄せた企業の実に70.6%が、自社の社員に対して「副業・兼業を認めている」または「認める予定である」と回答したのです。
また、厚生労働省も「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を段階的に改定し続けています。
大きな転換点となったのは2018年(副業元年)です。
この年、厚労省はモデル就業規則から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という禁止規定を削除し、「原則容認」へと大きく舵を切りました。
その後も2020年や2022年の改定を通じて、企業に対し労働時間の管理や健康確保のルールを明確化するなど、国を挙げて副業を後押しする姿勢を強めています。
国と経済界が足並みを揃えて、多様なキャリア形成を後押しする時代に本格的に突入したと言えます。
なぜ大企業は今になって「副業解禁」に動いているのか?
これまで「副業=会社のルール違反」「自社の業務に専念すべき」というイメージが強かった日本の企業社会が、なぜここに来て一気に副業容認へと舵を切ったのでしょうか。
一つは、「企業側が社員のスキルアップ(リスキリング)や自律的なキャリア形成を求めている」という背景があります。
終身雇用制度が崩れつつある現在、企業は社員の一生を完全に保証することが難しくなりました。
そのため、社外で新しい知識や人脈を得て、それを本業に還元してほしいという狙いがあります。
もう一つは、「優秀な人材をつなぎ止めるため」です。
副業を禁止したままでは、成長意欲の高い優秀な社員が「もっと自由に働ける会社」へと転職してしまうリスクが高まります。
企業側にとっても、柔軟な働き方を認めることは人材確保のための必須の戦略となっているのです。
そして労働者である私たちの側から見ても、長引く物価高騰と実質賃金の低下が続く中、会社のお給料だけに依存しない「複数の収入源」を持つことは、家計を防衛するための現実的な手段となっています。
なぜ数ある副業の中で「士業」が選ばれるのか?
では、なぜアルバイトや一般的なネット副業ではなく、あえてハードルの高い「士業」を副業に選ぶ人が増えているのでしょうか。
一番の理由は、「専門知識による参入障壁の高さ」と「単価の高さ」です。
誰でもすぐに始められるデータ入力や単純作業の副業は、ライバルが多く、どうしても単価が下がりやすい傾向にあります。
一方で、行政書士や社労士といった国家資格に基づく業務や専門知識は、無資格者が勝手に行うことができないため、価格競争に巻き込まれにくいという強いメリットがあります。
また、日々の生活を切り盛りする私たちにとって、「本業の昇給ペースの限界」も切実な問題です。
1年間一生懸命働いても、毎月の給料が劇的に上がることは稀ですが、士業の副業で月に1〜2件の案件を受注できれば、月数万円から十数万円の収入アップが見込めます。
本業の安定した給与を「家計の防波堤」にしながら、自分の専門性を活かして別の収入源を育てるという、非常に賢くローリスクな働き方が選ばれているのです。
行政書士の副業事情:会社員が土日だけで稼ぐための戦略
行政書士の副業は、生活費を本業でカバーしながら、精神的な焦りを感じることなく自分のペースでビジネスの基盤を作れるのが最大の強みです。
行政書士は、「街の法律家」とも呼ばれる身近な存在です。
「会社を辞めるのは抵抗があるけれど、行政書士って週末だけでもできるの?」という疑問を持つ方も多いですが、結論から言えば十分に可能です。
行政書士法の中に、副業を禁止する条文は存在しません。
即独立のリスクを回避できる最大のメリット
本業を続けながら行政書士を始める最大のメリットは、何と言っても「生活費の心配がいらないこと」です。
行政書士として登録・開業しても、最初からポンポンとお客様が来てくれるわけではありません。
専業でいきなり独立(即独)した場合、売上が立たない焦りから精神的に追い詰められたり、開業資金が底をついたりするリスクが常につきまといます。
しかし副業であれば、当面の生活費や家賃は本業のお給料でしっかりとカバーできます。
売上ゼロの月があっても家計が傾くことはないため、焦らずに自分のペースでSNSやブログを育て、クラウドソーシングサイトやココナラなどで少しずつ実績を積み上げ、集客の仕組みをじっくりと構築できるのです。
副業ならではのデメリット「平日問題」とは?
一方で、行政書士を副業にする際に必ずぶつかる大きな壁があります。
それが、スケジュール調整が極めて難しい「平日問題」です。
行政書士の主な業務は、警察署への車庫証明の提出や、役所への許認可申請など、官公庁を相手にした手続きが多くを占めます。
ご存知の通り、日本の官公庁は基本的に平日の日中しか窓口が開いていません。
さらに、行政書士法には「依頼に応ずる義務(正当な理由なく依頼を拒めない)」が定められており、「私は副業なので、平日の案件はお断りします」と公言して営業することは非常に難しいのが現実です。

「平日問題」を乗り越える2つの現実的な解決策
では、平日にフルタイムで働く会社員は、どうやって行政書士の副業を成り立たせているのでしょうか。
一つ目の解決策は、「オンラインや郵送で完結する業務に絞る」という戦略です。
例えば、契約書の作成チェック、内容証明郵便の起案、遺言書の作成サポートなどは、平日の窓口対応が必須ではありません。
クラウドソーシングサイトなどを活用して、土日や平日の夜間に自宅のパソコンで作業を完結できる案件を中心に受注するスタイルです。
二つ目は、「他の行政書士と連携する(共同受任・業務委託)」という方法です。
自分が窓口に行けない平日は、専業で活動している先輩行政書士や同業の仲間に実務を委託したり、逆に営業活動を自分が担って手続きをお願いしたりする連携プレーです。
また、資格を持たない家族を「補助者」として登録し、平日の書類提出だけをお願いするというのも、多くの副業行政書士が実践している非常に現実的な手段です。
社労士の副業事情:労務の専門知識を在宅で活かすポイント
社労士を副業にするなら、平日日中の対応を避けるため、スポットの独占業務や専門ライター、講師業など在宅で完結する働き方を狙うのが正解です。
社会保険労務士(社労士)もまた、副業として非常にポテンシャルの高い資格です。
企業における働き方改革が進む中、労務管理や社会保険のエキスパートである社労士の知識は、あらゆる業界で求められています。
社労士の3つの業務分類を知る
社労士の仕事を探す前に、まずは業務の基本となる3つの分類を押さえておく必要があります。
- 1号業務(手続き代行): 労働・社会保険に関する申請書類の作成や、行政機関への提出代行です。
- 2号業務(帳簿作成): 法令に基づく就業規則や、各種労務関連の帳簿の作成です。
- 3号業務(コンサルティング): 労務管理や社会保険に関する相談、人事制度の構築などの指導です。
このうち、1号・2号業務は社労士法で定められた「独占業務」です。
社労士会に正式に登録して開業すれば、副業であってもこれらの独占業務を請け負うことが可能になります。
会社員が狙うべきは「スポット業務」と「専門ライティング」
しかし、企業と毎月定額で顧問契約を結ぶような仕事は、平日の日中(本業の勤務時間中)に緊急の労務トラブル対応を求められるリスクがあります。
本業に支障をきたしてしまっては本末転倒なので、生活者目線では無理な顧問契約はおすすめしません。
副業としてムリなく稼ぐのであれば、時間や場所に縛られない以下の働き方が現実的です。
業務のスタイル 仕事内容の例 メリット デメリット・注意点
スポットの独占業務 就業規則の作成・見直し、単発の助成金申請サポートなど 単価が高く、社労士としての実績を作りやすい。 納期管理がシビア。平日の役所対応が発生する可能性あり。
専門記事のWebライター 人事労務、社会保険、年金に関する解説記事の執筆 完全在宅・土日で完結。有資格者として高単価(文字単価3円以上等)を狙える。 独占業務ではないため、実務経験としてはカウントされにくい。
資格試験の添削・講師 社労士受験生向けの模試の添削、土日のオンライン講座の講師 実務経験がなくても始めやすく、週末の時間を有効活用できる。 依頼の時期が試験シーズンに偏りやすく、収入の波がある。
特に、クラウドソーシングなどを活用した「Webライター」は、社労士の副業として非常に人気があります。
Googleの検索エンジンは、お金や健康に関わる分野(YMYL領域)において、情報の専門性と信頼性(E-E-A-T)を極めて厳しく評価します。
そのため、「社労士資格保有者が監修・執筆した記事」はSEOの観点から非常に価値が高く、企業メディアからの需要が絶えません。
いきなり実務の責任を負うのが怖いという方は、まずは知識を活かした専門ライターからスモールスタートを切るのが賢明なルートです。

知っておくべき現実:士業副業にかかる「初期費用」と「固定費」の壁
士業の副業で最も注意すべきリスクは、資格登録にかかる数十万円の初期費用と、毎月の会費による「経費負け(赤字)」です。
ここまで士業副業のメリットや働き方をお伝えしてきましたが、ここからは少し耳の痛い、しかし絶対に目を逸らしてはいけない「お金の現実」についてお話しします。
資格試験に合格しただけでは、行政書士や社労士として「独占業務」を行うことはできません。
各都道府県の会に正式に登録し、開業手続きを行う必要があるのですが、ここには決して安くない「初期費用」と「固定費」がかかってきます。
行政書士と社労士のリアルな登録費用シミュレーション
登録にかかる費用は都道府県によって異なりますが、目安として以下のような金額が必要です。
【行政書士の場合】
- 入会金・登録手数料:約20万円〜25万円
- 月額会費:約5,000円〜7,000円(年間約6万〜8万円)
- その他:職印の作成代、行政書士バッジ代、専用の業務ソフト代など
【社労士の場合】
- 登録免許税・入会金など:約10万円〜15万円
- 月額会費:約5,000円〜1万円(年間約6万〜12万円)
- その他:全国社会保険労務士会連合会への登録手数料など
つまり、いざ副業として開業しようとすると、最初に数十万円のまとまった現金が飛んでいき、さらに「息をしているだけで毎月数千円〜1万円の固定費」が確実に出ていくことになります。
「経費負け」で失敗するよくあるパターン
士業の副業で最も多い失敗パターンが、この「固定費の壁」を越えられずに撤退してしまうケースです。
「せっかく苦労して資格を取ったのだから、早く開業して名刺を作りたい!」と勢いで登録したものの、平日は本業が忙しくて営業活動ができず、仕事の依頼はゼロ。
売上が全くないのに、毎月の会費だけが銀行口座から容赦なく引き落とされていく……。
撤退して廃業届を出すのにも手間がかかるため、ズルズルと会費だけを払い続けてしまう人も少なくありません。
これでは、家計を豊かにするための副業が、単なる「お金の食い虫」になってしまいます。
副業を長続きさせるためには、自分の労働時間と見込める売上を冷静に計算し、「月に最低いくら稼げば赤字にならないか(損益分岐点)」を事前にシビアに見積もる必要があります。
利益を出す自信がつくまではあえて「登録」はせず、資格を名乗るだけでできる業務(Webライターや講師業など)で手堅く稼ぎながら準備期間に充てる、というのも立派な戦略の一つです。
考察:資格副業で「ムリなく手堅く」稼ぐための生活者目線の見通し
ここからは、日々家計のやりくりと副業のバランスを考え、さまざまな働き方を見てきた筆者としての率直な見解です。
世の中のSNSや広告を見ていると、「資格を取って週末だけで月収50万円!」「未経験から即独立して年収1000万円!」といった華々しい成功ストーリーが溢れています。
しかし、生活者のリアルな目線で見れば、現実はもっと地味で泥臭いものです。
資格はあくまで「運転免許証」のようなものであり、それを持っているからといって自動的にお客様が集まってくるわけではありません。
お客様の悩みをどう解決するのか、自分の存在をどうやって知ってもらうのかという「商売としてのマーケティング視点」がなければ、士業の資格も宝の持ち腐れになってしまいます。
本業という最強の「安定」を手放さない価値
だからこそ、私は「会社員という最強の安定ステータスを手放さずに、小さな副業から始めること」を強くおすすめしたいのです。
いきなり立派な事務所を借りたり、高額な開業コンサルタントに何十万円も払ったりする必要は全くありません。
これらは「やらなくていいこと」の筆頭です。
まずは自宅のパソコン一台で、クラウドソーシングを使って単発の案件を受けてみる。
同業者の勉強会に顔を出して、先輩の補助業務を時給で手伝わせてもらう。
そうやって「自分でお金を生み出す小さな成功体験」を積み重ねていくことが、結果的に一番リスクがなく、確実な近道になると考えます。
家族との生活ペースを壊さない「やらない決断」
また、本業との両立において最も大切なのは、「自分と家族の生活ペースを壊さないこと」です。
睡眠時間を極限まで削り、家族との貴重な休日をすべて副業の作業に費やしてしまっては、一体何のために家計を潤そうとしているのか分からなくなってしまいます。
「今月は本業の決算期で忙しいから、副業はセーブしよう」
「この案件は平日日中の電話対応が必須になりそうだから、今回はあえてお断りしよう」
こうした「やらない決断」を潔くできるのも、本業という命綱をしっかり握っている副業ワーカーならではの特権です。
変化する企業と私たちのこれからの働き方
2022年10月の経団連の調査が明確に示したように、日本の雇用環境は今、劇的な過渡期にあります。
企業が社員の一生を丸抱えする時代が終わり、一人ひとりが自律的にキャリアを築くことが求められるようになりました。
これは一見すると厳しい現実に思えますが、見方を変えれば、会社という枠組みを超えて自分のスキルや名前で勝負できるチャンスが広がっているということです。
難関資格の取得に費やしたあなたの努力と膨大な知識は、決して無駄にはなりません。
周りの華やかな情報に焦ることなく、自分の足元をしっかりと固めながら、ムリのない範囲で少しずつ、確かな収入の柱を育てていってほしいと願っています。
まとめ
行政書士や社労士といった専門知識を活かした副業は、大企業の副業解禁という追い風もあり、会社員にとって現実的で魅力的な選択肢となっています。
- 大企業の副業容認は本格化:2022年10月の経団連調査で大企業の約7割が副業を容認。人材流動性の確保やリスキリングを背景に、国全体で多様な働き方が推奨されている。
- 行政書士は「平日問題」のクリアが鍵:即独立のリスクを回避できるが、官公庁の窓口が開いている平日の対応が壁になる。オンライン完結業務や他士業との連携が不可欠。
- 社労士は在宅でのスモールスタートが現実的:独占業務だけでなく、知識を活かした「専門Webライター」や「講師業」など、本業の支障にならない在宅で手堅く稼ぐ方法が豊富。
- 「経費負け」のシミュレーションは必須:開業登録には数十万円の初期費用と毎月の会費がかかるため、見込める売上と固定費のバランスを冷静に見極めることが最重要。
まずはご自身のライフスタイルと照らし合わせ、無理のない範囲で、小さく第一歩を踏み出してみてください。
よくある質問
行政書士や社労士の副業は、会社にバレずにコッソリできますか?
完全に隠し通すことは非常に困難です。士業として各都道府県の会に登録すると、連合会のホームページ上にある会員検索システムに名前や事務所所在地が掲載されます。誰でも検索できる状態になるため、会社関係者が見ればすぐに判明してしまいます。トラブルを防ぐためにも、必ず会社の就業規則を確認し、適切な届出を行った上で堂々と始めることをおすすめします。
平日は全く動けませんが、士業の副業は本当に可能ですか?
可能です。確かに官公庁の窓口は平日しか開いていないため、対面での申請業務などは難しいのが現実です。しかし、土日や夜間にオンラインで完結する「クラウドソーシングでの契約書作成チェック」「専門記事のWebライター業務」「資格試験の添削指導」などに業務を絞り込めば、週末だけでも十分に収益を上げることは可能です。
副業の確定申告は、いくら稼いだら必要になりますか?
副業で得た「所得(売上から経費を差し引いた金額)」が、1年間(1月1日〜12月31日)でトータル20万円を超えた場合に、ご自身で確定申告を行う義務が発生します。士業の案件は1件あたりの単価が高く20万円を超えやすいため、売上が少ないうちから、通信費や会費などの領収書はしっかり保管し、帳簿をつけるクセをつけておきましょう。
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— 北原 さやか


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